板書での「わき道マーク」の活用


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第1版 2007.09.08

僕自身(僕は1962年=昭和37年=生まれ)が過ごした大学生活を現在の大学生に投影し,教師が大胆な=無茶な!?=授業をしても,学生が互いの情報交換や自学自習で教師が想定する知識を身につけることを期待してしまいがちだが,現在の大学では計画的で分かりやすい授業が強く求められている.

本筋の分かりやすさは基本であり,重要である.だが,卒業後に仲間とする話の中では,余談の影響の大きさがとりざたされることが少なくない.

教師の使命は,知識を提供することであると同時に,探求への情熱をはじめとするその人間性を学生にぶつけることにもある.そして,よほど授業のうまい教師でない限り,人間性は余談の中に現われやすい.

こう考えて,本筋を損なわずに余談を共存させる方法を検討したのが,十数ほど前(?)のことである.要するに,理系専門科目の教科書によくみられるコーヒーブレークのような機能を板書で実現したかったのである.

余談が区別できれば,授業の本筋の理解で精一杯の学生を無用に混乱させることなく,授業が十分に理解できている学生には発展的テーマを提供することができる.本筋=試験の出題範囲=を理解するには,わき道の開始から終了までを省いておけばよい.(ただし,教師側も学生側も,わき道の終了マークを書き忘れないように注意が必要である! さもないと本筋の内容が大きく削除されてしまうことになる!?)

このような経緯で考え出したのが「わき道マーク」である.これは,発想としては,上記のコーヒーブレークと,ブルバキ数学原論で用いられている「危険な曲がり角(dangerous bend)」

を合わせたものである.危険な曲がり角は,学習者が注意して読むべき部分に付けられたマークで,文書処理システムTeXを作った Donald E. Knuth も自身によるTeXの解説書 ``The TeXBook'' の中で用いている.

さて,「わき道マーク」には開始と終了

があり,次の例(板書をイメージしている)のように用いる.

単振り子の振動周期 T

周期の式を用いれば,逆に,lTを測定することで重力加速度gを求めることが可能となる.云々….


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