提案あるいは疑問

■提案(個人的な訴えかけ)/■疑問(不可解に思うこと)


■提案 学会や発表会での質疑応答の際に,「ふたつ質問があります」と切り出すのは反則だと思う.質疑応答の時間が短い会の場合には,そのふたつで時間切れになってしまうこともある.次に質問したいと思っているひとがいるかもしれないのだから,他に質問がないことが明らかでない限り,ひとり「ひとつずつ」がマナーだ.

本当に質問したいなら休憩時間や会が終わってからすればいいという反論があるかもしれないが,聴衆の前で問題提起すれば,一対一では得られない意外な情報を得ることができるかもしれないので,質疑応答の時間に質問する方がいい.それに,学会などでは,出張日程の都合によっては中途で会場を去ることもあるから,質疑応答の時間が最も確実である.

ふたつ質問がある場合でも,まずひとつだけしておいて,2巡目があるならそのときにすればいいのだ.カラオケなら当たり前のルールである.

――2002.07.04

■提案 研究発表でパワーポイントを使用するのが当たり前になってきた.ソフトの機能に溺れずに,内容を伝えるという本来の目的を達成するために提案する.

●説明部分を指し示そう―→アニメーションを効果的に使えば人の注意を喚起することはできるが,そのアニメーションが小さくて一瞬で終わる場合,他の部分に注意が向いていると見逃すことがある.だから,差し棒(やマウス)での指し示しも同時に行なおう.

●スライド以外の舞台裏は見えないようにしよう―→発表開始時に作業ウィンドウやデスクトップが見える状態になっていて,そこからスライドショーに切り替えるのを頻繁に目にするが,最初から最後までスライドショーしか見えないようにするのがスマートだ.

●スライドの選択にマウスを使うのはやめよう―→質疑応答でスライドの移動が必要な時にマウスを使うのを目にすることが多い.そして大概は操作に手間取っている.パソコンを覚えたてでマウスしか使えない初心者ならともかく,そうじゃないなら状況に応じてキーボードも使おう(例えば“矢印キーでの移動”や“番号+Enterでのジャンプ”).

※スライドショー実行中にHelp(Mac)あるいはF1(Win)を押すとスライド制御方法の一覧が表示される(もちろんヘルプにも書いてある).

#パワーポイントはスライド選択機能の貧弱さに不満がある.研究発表での使用は想定されていないんじゃないかとさえ思う(PowerPoint 97および98の経験の範囲で).

――2001.02.24

■提案 電車の中では着信音を消そう.

どうも電話だから許されると考える風潮が根強いが,家庭の電話と携帯電話はまったく違う.家庭電話なら家族全員が電話の相手である可能性があるが,携帯電話ではその可能性はない.着信音を鳴らすことは,ラジオをスピーカーから聴くのと同じだ.ラジオについてなら,自分の都合で発生する音で他人の邪魔をしないという習慣が徹底しているのに,携帯電話だとそうならないのが不思議だ.

これと矛盾するようにみえるかもしれないが,僕は電車内の携帯電話会話容認派だ.会話は当然認められている行為であるので,相手がそこにいようがいまいが本質的には同じだからだ.

――2000.12.07

■提案 電子メイルで返事をするときにタイトルを付けなおす人が少なくないが,それは受け取る側を混乱させる.用件に対する返事なのか,新たなメイルなのかの判断がし難いからだ.

メイルソフトの「返信」機能を使い,差し出し人のタイトル“○□※◇”にRe:が付く“Re: ○□※◇”にしよう.

ところで,とても多くのメイルを受け取る人には,“お願い”や“ご無沙汰しています”のような漠然としたタイトルではなく“11月8日(水)の打合せ時間変更”のように具体的にした方が読み飛ばされ難い.

――2000.11.08

■疑問 イタリックのダブリュー(語源はdouble u)
■■オメガ?
をオメガと読む学生が多いのはなぜだろう.大学の日常だけでなく学会発表でもかなりの頻度耳にする.

――2000.06.27

■提案 学会などの研究発表の際,座長(司会者)が発表者の氏名,所属,タイトルを紹介するにもかかわらず,発表者がそのすべてをまた繰り返すという悪しき習慣をやめよう.

この悪しき習慣が,日本の(少なくとも僕の知っている)理工系学会にはびこっている.

座長の言葉が聞き取りにくいとか,発表用OHPシート(スライド)にそれら情報がかかれていないため,念押しで付け加えるというならまだしも,そういうことではない.

そのような恥ずかしいことを僕はしない.「簡潔すぎる」と(悪い意味で)ひとに言われることは多いが“Brevity is the soul of wit”を旨とする者としてはかなり気になっている.最近はかなり諦めが入ってきたことと,個人の侵害を恐れること,そして内容よりも形式ばかり気にして研究の本筋をはずれるのを恐れることから,以前ほどは意識に上らなくなってきたが….

それは「日本の常識,世界の非常識」である.国際学会の場でそのように話し始める外国人を見た記憶がない.

この恥ずかしさを,懇親会でA氏がY氏を誰かに紹介しているという想定で例えれば,…

A氏:こちらはI大学のYさんです.Yさんは神経情報処理のモデル研究を行っていて,僕とは研究分野が近いものですから,時々国際学会でも顔を合わせるんですよ.
Y氏:はい,僕はI大学のYです.僕は経情報処理のモデル研究を行っていて,Aさんとは研究分野が近いものですから,時々国際学会でも顔を合わせるんです.僕はKオケが大好きですから,この懇親会が終わったら是非Kオケで親交を深めましょう.
ということになる(変ですよね? Kオケへの誘い方のことじゃないですよ!).

悪しき習慣改善のための僕の提案は:

  • 座長がタイトルと発表者を紹介したら,発表者はいきなり話題に入る(これは決して“つかみ”を否定しているのではない.“つかみ”は大切である.)
    →発表者の選択でできる方法
  • 座長は「はい,次の方どうぞ」とのみ言う.
    →次に座長をする機会に僕が試してみようと思う方法.
    ⇒現在(2001.03.15)までに,さまざまな機会に試してみた.概ね成功である.ただ,さすがに思慮深い研究者は自分の氏名やタイトルを口にしたりしないので,顔ぶれをよくみて判断しないと,座長も発表者もタイトルを言わないという事態に落ち入りかねない(経験談).
である.

――1998.12.16版を一部修正


茨城大学工学部メディア通信工学科人間情報工学研究室矢内浩文の頁示唆と助言