独白:研究発表の心得(第1.04版)


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表題の「独白」が示す通り,これは矢内個人の考えを述べたものです。
卒論や修論の発表をイメージして書いています。
順不同。
タイトルトークで、聴衆の思考モード切り替えをサポートせよ。[第1.04版で追加(2021-08-30)]
※ 学会にせよ、卒論や修論にせよ、話題は突然に切り替わる。聴衆の思考モードの切り替えには少なくとも1分程度はかかるだろう。だから、いきなり本題に入ってしまうと、聴衆の頭の中はしばらく、「えっ? ○○○って何?」「この研究は実験?それとも画像処理?」「反応ってアンケートの回答?それとも脳波?」などの「ハテナ」が続出する——ただしこれは発表に強い関心がある聴衆の場合であって、あまり関心がない場合には「この発表は流そう」となる。
 さて、そこで大切なのがタイトルトークである。聴衆の頭の切り替わりを助けるために、タイトルスライドだけを使って、タイトルの用語をかみくだいて説明したり、趣旨を説明する1分以内のトークをタイトルトークと呼んでいる。
発表練習の目的——それ以外にもあてはまる部分が多々あると思いますが、特に中間審査のための練習を意識して[第1.04版で追加(2021-08-30)]
 発表練習は、発表を流れるように、滑らかに行なうための練習の場ではありません。
 発表練習の目的は
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 研究を実施している本人に、研究の「目的、背景、結果、今後」を整理して述べてもらうことにより、第三者(指導教員など)が研究全体を客観的に眺め、本人が目的を正しく理解しているかどうか、背景(関連研究など)の調査が十分かどうか、実験方法が適切かどうか、分析の観点や整理のしかたが適切かどうか、結果とその考察が十分かどうか、などを点検すること。
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です。したがって、
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* 表記や表現の修正のみに終わる発表練習では不十分であり、表現や分析の観点の抜本的な修正が提案される発表練習を目指さなければなりません。
* 現状を尊重してはいけません。
* (相手に気を遣ってのことかどうかにかかわらず)ちょっとした修正で済む範囲での指摘に終始するのはいけません。
* たとえすべて作り直すことになっても、いいものができる方が大切だと考えるのがいいでしょう。
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差し棒(やレーザーポインターやマウス)による指示で聴衆の注意を引きつけよ。
求めるべきは、発表者の満足ではなく聴衆の満足である。
質問が出ないようにと期待、あるいは腐心するのはまったくの思い違いである。質問が出ないのは、発表がつまらなかった、あるいはまるっきり分からなかったということである。
正確さと説得力は必ずしも相容れない。詳細を示し過ぎると、聴衆は木を見て森を見ず状態になる。
内容をすべて説明すると考えずに、おもしろさを伝えると考えよ——映画のスポット広告のように。
※面白さを伝えようとすればおのずと予備知識の説明が必要になる。
「事実」と「意見」を区別する。
過去の研究の引用と自ら得た結果を区別する。
聴いている人々には全く予備知識がない可能性を考慮する。
※メディア通信工学科のように幅広い分野の研究が行なわれている場での発表ではこの点に特に留意する必要がある。しかし同時に、狭い分野の研究発表会ならば気にする必要はないかというとそうでもない。その分野の対象が狭いほど研究は深くなり細分化し、結局、[分野の広がり]÷[個人の守備範囲]はさほど変わらないからだ。
「読んで分かる」と「聴いて分かる」はまったく異なる。紙に書く論文の積もりで話したのでは聴衆に理解されない。
※「読んで分かる」ためのものと「聞いて分かる」ためのものでは、一般に呈示順序が全く異なる。また、紙の論文なら読者は好きなように後戻りや先読みができるが、発表ではそうはできない。
発表者は内容について最もよく知っている。それは見方を変えると、はじめてその話題に接した時の気持ちを忘れている。説明が飛躍して分かりにくくならないように配慮せよ。
参考書
『理科系の作文技術』木下是雄(中公新書)1981年初版
『科学論文をどう書くか—口頭発表の仕方まで』末武国弘(講談社ブルーバックス B454)1981年初版
『「分かりやすい表現」の技術〜意図を正しく伝えるための16のルール〜』藤沢晃治(講談社ブルーバックス B1245)1999年初版


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