茨城県立日立第一高等学校と茨城大学工学部の高大連携講座
〜最先端の科学技術とものづくりの楽しさ〜
平成20年度 第5講
矢内浩文「ランダムさと脳」
2008年8月4日(月)
茨城大学工学部E5棟8Fにて
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2008年9月7日(日) 更新
■参考 : 講座一覧
2008年7月16日から9月18日にわたって,以下の講座が開講されます.
- 江口美佳 : 次世代エネルギー〜電池のはなし〜(実験付き)
- 小峯秀雄 : 地面の下には生活を支えるものがいっぱい
- 前川克廣 : 機械製作基礎
- 横田浩久 : 光ファイバ通信入門
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- 乾 正知 : 「ものづくり」とコンピュータグラフィックス
- 北野 誉 : DNAから見る進化
- 原口忠男 : 地球環境と燃料電池
- 小林正典 : 1万数千個の実を成らせたトマトの巨木と高校での勉学
- 福岡泰宏 : ガンダムはいつできる?---最新ロボット事情からの考察---
- 湊 淳 : ロボットとマイクロコンピュータ
- 田中伊知朗 : 東海村J-PARCでの生命科学
- 鎌田 賢 : テレビゲームを通して学ぶプログラムの原理
- 稲垣照美 : 自然の音や光と人の感性
- 仙波一郎 : 数理パズルと「考える」技術
■矢内浩文「ランダムさと脳」の概要
▼プロローグ
- 「最先端の科学技術」や「ものづくり」と「脳」の関係は??
- 脳について学べる学部,学科は?
→ A. 医学部ばかりでなく,工学部や文学部でも学べる! それぞれ違った観点から.
▼本題
- 授業概要
日常語では「いい加減」と「デタラメ」は似たようなことばですが,科学的表現の中では異なるニュアンスを持ちます.「いい加減」は,「テキトー」≒「気の向くまま」と考えれば,やりたいようにやることですが,やりたいようにやっていては「デタラメ」にならないのです.デタラメはランダムと言い換えることができて,ランダムにするのはとても困難な作業なのです.よほど頭をつかわないとランダムに振る舞うことはできません.この授業では,その場で体験してもらいながら,ランダムとは何か,ランダムさはどのようにして測れるのか,人間はどれくらいランダムになれるのか,人間のランダムさから何が分かるのかを学びます.
- 体験:ランダムに書く
- 体験方法
- 0から9の数字をランダムに書く.
- 最初は「0」→ 早速記入してください
- リズムに合わせて.(1個/1.5s)
- マスの中に,左から右へ,そして次の行へ.(全60マス)
※「ランダムに」は次のように言い換えることができます‥‥「デタラメに」「できるだけ予測されないように」「サイコロを振って出てくる目のように」
- 結果の分析
- ランダムさの評価(その1):出現頻度の理想値からのズレ.理想値=等頻度.
- ランダムさの評価(その2):隣り合う数字の差(*)の頻度の理想値からのズレ.理想値=テント型.
(*) 例えば数字列が 01956... であれば,隣り合う数字の差は +1, +8, -4, +1, ...
→ 下図は,受講生によるランダム生成の結果(18名の平均)です.赤い破線は理想値=テント型.
- 人間によるランダム系列生成の性質
- 人間の生成するランダム系列に見られる特徴.図の破線は真にランダムな場合.
- repetition avoidance (連続の回避) →下図(左)
- serial responding (順序反応) 例:...01...34...98... →下図(左)
- cycling (約10回の生成ですべての数字を出す傾向) →下図(右)
- 応用例
- 発生個数と乱数度の関係
- 「思考時間-乱数度」と運転適性の相関
- 私たちの目標:疲労の検出,緊張の検出(例えば,ウソ,不審行動).
▼エピローグ
- バーバル情報とノンバーバル情報 (言語情報と非言語情報)
- 対面コミュニケーションの情報量 (Mehrabian, 1968年):7-38-55の法則
- 身体の揺れで人物を見分ける ← ノンバーバル情報の活用例
- 「監視カメラを用いて店舗内の不審行動を自動検出するシステム」茨城大学工学部,システム・プロダクト株式会社,茨城県工業技術センター技術基盤部門
▼補遺
- 人間特性の例:錯視=視覚の錯覚
例:チェッカー・シャドー錯視[見る]← タイルAとタイルBは,実はまったく同じ色!
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