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2.神経型システムとしての連想記憶

神経型システムというのは,広い意味では,すべて記憶情報処理をしている訳ですが,モデルの見方に応じていくつかに分類されています.

それぞれに,主に用いられている回路網の構成形態がありますが,本来は構成の限定は不要なはずです.しかし実状は,その目的を達成するのに相応しいと思われている構成を予め設計し,その制限の中での振舞いを調べようというのが殆どです.構成の選択はモデル選択と呼ばれており,実は最も難しい課題に属します(素子数の決定もモデル選択です).

今回は,単純なモデルを用いるとさまざまな現象が議論しやすくなり,本質が見えてくる可能性があること,しかしそれと同時に,単純なモデルがさまざまな複雑な振舞いをすること,そして,神経型システムの納得への道は先が長く,おもしろい課題に溢れていること,が伝えられるような内容になることを願っています.

神経型記憶情報処理システムとして,ここでは連想記憶を取り上げます.連想記憶は「連想的情報処理のモデル」であり,したがって「誤りを許容して修正しつつ情報処理を進めることのできるシステムのモデル」です.記憶のモデルが即ち神経型システムであるといえるのですが,パターンとしての記憶の蓄積と再生を議論するモデルを特に連想記憶と呼ぶことが多いです.しかし同時に,連想記憶という枠組みに入らない神経型システムはないといっても過言ではありません.記憶を扱わない神経型システムはあり得ませんから.

神経型システムの概念図
図1 神経型システムの概念図
神経型システムを概念的に示すと,図1のようになります.図では素子に番号がふってありますが,飽くまでも形式的なものです.この表現方法では,空間上の位置には確定した意味はなく,他の素子との関係(位置関係ではありません)に意味があります.(現実の神経系では,場所による役割の分担がありますが,ここではそれは考えません.また,現実の神経系は空間的な配置に応じて担う情報が異なりますが,それは大局的な意味でです;基本的連想記憶で取り扱うような微細な意味では空間の正確な位置はあまり関係ないと思われます.)

記憶は素子の状態のパターンで表現されます.素子は動かずにどこかの場所に固定されているとします.そして,素子の状態は発火するかしないかの何れかだとします(実際にはさまざまなモデル化法があり,現実の神経細胞も種類によってさまざまな発火形態がありますが,ここでは最も簡単なモデル化を採用します.因みに,神経細胞には発火するかしないか2つの状態に分かれるものが多く見られ,その振舞いを全か無か,all-or-none,といいます.).数理モデルでは,発火状態を+1で,休止状態を-1で表現します.


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