連想記憶の性能改善法として注目されている非単調ニューロン[3] を離散ダイナミクスの意味で拡張したのが2段ダイナミクス・ニューロン,(1) 式,である.相関行列型で対角成分を0にした場合 (この行列を と書こう) には,記憶ベクトル数とニューロン数の比率:負荷率 が大きくない場合, として とおいた場合に連想記憶の性能が高くなる事が知られている[5].それら性能を高くする関数のうち,最も単純なのは, つまり線形関数の場合である.この場合について (1) 式を具体的に書けば,
( は単位行列) となり,線形の場合の性能改善が,相関行列を用いて直交射影行列を近似している事に起因する事が分かる.これについて説明しよう.擬逆行列 の von Neumann 展開は
である[4].従って,直交射影行列は
と表わせる.行列 の展開を最初の2項で止めれば,
となり,(4) 式で用いられている形の行列が現われる.
線形の2段ダイナミクス・ニューロンを拡張したのが次に挙げる 次の線形2段ダイナミクス・ニューロンである.
第2段階の式は,より神経回路モデルらしく
或いは
と書く事もできる.
で,線形2段ダイナミクス・ニューロン回路は「閾値ニューロン回路に直交射影行列」を用いたモデルと一致する.従って, とした場合の線形2段ダイナミクス・ニューロン回路の性質は,擬逆行列型モデルの解析結果[1, 2]をそのまま適用できる.