次は: 再認確信度と主観的類似度の関係
上は: 円をランダムに配置したパターンの記憶について
 ひとつ前は: はじめに
 
Wilton and File (1975) は,小さな円をランダムに配置したパターンの記憶・再認課題を通して
-  ひとは円の間の位置関係を記憶しているのではなく,何らかの形で円の位置を捕らえて記憶している.
 -  近接した円の群を単位として記憶している.
 
と結論しました.その際に用いられたパターンは,円が比較的隣接しているもの,隣接性のないものの2種類でした.
Wilton and File (1975) の追試を行なってみました.パターンの作り方は以下の通りです.
-  A4判の用紙に直径1.4[cm]の円を12個ランダムに描く(ただし,円は重ならないようにする).これを8枚用意する.
 -  記憶パターンを元に,再認用の試験パターンを2種類の方法で作成する.
	
-  R-パターン(8枚):記憶パターンの12個の円の中から6個をランダムに残したもの.これらを 
 と表わします. -  N-パターン(8枚):記憶パターンの12個の円の中から1個をランダムに選び,それに最も近い5つの円と合わせて6個を残したもの.これらを 
 と表わします.
	 
 
実験条件或いは方法は以下の通りです.
-  先に作成した8枚のパターンから5枚を選び記憶パターンとする.
 -  試験パターンはR-パターンとN-パターン各8枚,合わせて16枚.
 -  被験者:20人(大学生)
 -  記憶手順:記憶パターンを1分30秒間を使って記憶し,その後記憶を頼りに同じ大きさの紙にパターンを再現する(再現を行なうのは記憶の集中力を高めるため).これを5枚の記憶パターンについて行なう.
 -  再認実験手順:試験パターンを見て,それが先に記憶した記憶パターンの一部であるか(記憶パターンから6つの円を抜き出したものであるか)どうかを答える.答え方は,
 ある/ない/分からない
の何れか.これを16枚の試験パターンすべてについて行なう. -  参考:試験パターン提示順の影響を除く(或いは影響があるとすればどのようなものか把握する)ために被験者を2群に分け,一方の群には,他方とはランダムパターンと近接パターンを入れ替えた順序で提示しました.例:
 第1群: 
 
 
第2群: 
 
 
結果は表1と図1にまとめてあります.
 
 
| 
  |  ある→ある |  ない→ない |  ある→ない |  ない→ある |  ある→ |  ない→ | 
|  
  |  正 |  正 |  誤 |  誤 |  分からない |  分からない | 
 |  R  |  N  |  R  |  N  |  R  |  N  |  R  |  N  |  R  |  N  |  R  |  N | 
| 例数  |  61  |  68  |  40  |  50  |  26  |  28  |  13  |  7  |  13  |  4  |  7  |  3  | 
| 比率  |  0.610  |  0.680  |  0.667  |  0.833  |  0.260  |  0.280  |  0.217  |  0.117  |  0.130  |  0.040  |  0.117  |  0.050 | 
| 例数  |  129 |  90 |  54 |  20 |  17 |  10 | 
| 比率  |  0.645 |  0.750 |  0.270 |  0.167 |  0.085 |  0.083 | 
表 1: パターンの再認実験結果.Nは記憶パターンに含まれる12個の円から隣接する6個を,Rはランダムな6個を,試験パターンとした場合.
   
 
図 1: パターンの再認実験結果.Nは記憶パターンに含まれる12個の円から隣接する6個を,Rはランダムな6個を,試験パターンとした場合.
表の表現は,「ある→ある」とは,記憶パターンに``ある''ものを正しく``ある''と答えた場合,「ない→ある」とは,記憶パターンに``ない''ものを誤って``ある''と答えた場合,などです.
16枚の試験パターン中10枚(N, Rそれぞれ5枚)が``ある'',残り6枚が``ない''です.そして,被験者が20人なので,例えばN-パターンで言えば,「ある→ある」の総数は 
 ,「ない→ない」の総数は 
 です.
 
 
   
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矢内 浩文